ホテル

私がビジネスホテルで働いていたときの裏話。ビジネスホテルの部屋タイプランクアップのからくり

マイルや海外旅行の話ではないのですが、実は私は国内の某ビジネスホテルでフロントをしていた経験があります。全国展開されているビジネスホテルです。

そこでは日常的に部屋タイプのランクアップをフロントの裁量で行なっていました。(もちろん上司の指示ではありますが、ランクアップするしないやするタイミングはフロントの判断)

 

一言でなぜランクアップをするかと言うと、ホテルの稼働率を上げるためです。

稼働率というのは、今日は全客室数の何パーセントが宿泊に使われているか?ということです。そのホテルに100部屋の客室があって今日は80部屋が宿泊に使われているのであれば稼働率は80パーセント、と言うことです。

 

A・B・Cと3タイプの客室があったとします。

  • A … 狭いシングル 一泊 6,000円
  • B … 広いシングル 一泊 7,000円
  • C … ツインルーム 一泊 10,000円

 

この3タイプの部屋のAのみが満室になったとします。

  • … 狭いシングル 一泊 6,000円 満室
  • B … 広いシングル 一泊 7,000円 空室10
  • C … ツインルーム 一泊 10,000円 空室10

こうなるとBの部屋は空室があるにもかかわらず、予約の機会損失が発生します。

 

少しでも安いホテルを探している人もたくさんいるので、7,000円のBタイプの部屋しか開いていないと、6,999円以下の部屋に空室がある他のホテルへと予約が流れてしまうのです。

もちろんここのホテルが気に入っていて少々の値段の差なら関係なく宿泊してくれる人もいますし、会社の宿泊費は領収書精算だから関係ないと言う人もいますけど。

でも部屋タイプの選択肢は多い方に越したことはありません。

こういった理由で、すでに入っているAの部屋の予約をBにランクアップすることによってAの空室を作り、稼働率を上げるのです。

 

  • A … 狭いシングル 一泊 6,000円 空室5

      ↓5部屋ランクアップ

  • B … 広いシングル 一泊 7,000円 空室5
  • C … ツインルーム 一泊 10,000円 空室10

空室の数は全室合計で20部屋とランクアップ前と変わらないのでAの予約が新たに入りやすくなり、稼働率が上がる可能性がアップします。

 

もちろん、ランクアップはAからBのみではありません。

BからCもあり得ます。

私が働いていたホテルは、立地的に平日に宿泊するのはサラリーマンがほとんどなのでシングルルームはどんどん宿泊予約が入りますが、反してツインルームは売れ残りがちでした。

  • … 狭いシングル 一泊 6,000円 満室
  • … 広いシングル 一泊 7,000円 満室
  • C … ツインルーム 一泊 10,000円 空室10

ツインルームだけ空いていても当日宿泊ホテルを探しているサラリーマンからは候補ホテルから除外されてしまう可能性が高いです。

 

例えば、楽天トラベルのような複数のホテルの空室を検索できるサイトを利用する場合、宿泊日の他に部屋タイプもしくは宿泊人数を検索条件にする場合が多いです。

その時にツインルームしか空いていないホテルは検索結果に出てこないか、ツインルームのシングルユースとして出てきたとしても、他のホテルでもっと安く泊まれるシングルの空室と並んで表示されると、ほとんどの単身出張のサラリーマンがどちらを選ぶか答えは明白だと思います。

なので、BをCにランクアップしてシングルの部屋の空室を作ると言うわけです。

 

  • … 狭いシングル 一泊 6,000円 満室
  • B … 広いシングル 一泊 7,000円 空室5

      ↓5部屋ランクアップ

  • C … ツインルーム 一泊 10,000円 空室5

空室の数は全室合計で10部屋と変わらないのでBの予約が新たに入りやすくなり、稼働率が上がる可能性がアップします。

 

ただし、シングルからツインへのランクアップには注意点がありました。ツインルームは部屋の平米数はシングルよりも広くなるのですが、ベッド幅がシングルルームで使われているベッドよりも狭い場合があります。

例えばですが、

  • シングルルーム 横幅140cmのベッド
  • ツインルーム  横幅120cmのベッド×2

なので、部屋の広さなんかよりも眠る時にベッドが広い方が肝心と言う方はランクアップといえどベッドの大きさは要注意です。(フロントから説明はあると思いますが)

シングルからダブルルームへのランクアップとかなら問題ないんですけどね。

 

もちろん、いま説明した条件に当てはまる場合でもランクアップしないこともあります。

毎日満室が当たり前の人が集まるエリアや、普段は満室にならないエリアでも近くでイベントがある日など、ホテルの空室獲得そのものの競争率が激しくて、たとえ人気がない部屋タイプが売れ残っていたとしてもほっとけば満室になるような条件の場合はランクアップしません。

ランクアップしてもしなくても満室になるのであれば、ランクアップせずに定価で宿泊してもらった方がホテルの売り上げが上がるからです。同じ稼働率なら、売り上げも少しでも上げたいですからね。

なので、ビジネスホテルばかりが混在するオフィスエリアなどではランクアップはされにくいのかもしれません。

そもそもがっつりオフィスエリアな立地に建てられるビジネスホテルはシングルばかりであまりルームタイプの種類がない可能性もあります。

以上がビジネスホテルで部屋タイプがランクアップされる場合のカラクリです。

まあ、私が働いていたホテルの場合ですが、基本的に考え方はどこのホテルでも同じだと思います。